毎日、職場に行くのがつらい。なぜかいつもミスばかり。人間関係がうまくいかない……。
「どうして自分だけこんなにうまくいかないんだろう?」そう思い悩んでいませんか? 頑張っているのに報われない、努力しても空回りばかり。もしそう感じているなら、それはもしかしたら、あなたの「特性」や「心の状態」が関係しているのかもしれません。
本記事では、仕事や日常生活の「うまくいかない」の背景にあるかもしれない心の病気や発達の特性について、わかりやすくお伝えします。自分に当てはまるものを見つけることで、漠然とした悩みの正体が分かり、これからの「生きづらさ」を軽くするヒントが見つかるかもしれません。

私は、5年ほどかけて自分を深く知ることに注力してきました。
自分では気づいていなかったコンプレックスや特性を知ったことで沈んだ気分をリセットできるようになり、どんなときも再スタートできるようになった気がします。
自分に合う環境へ向かうには、まず自分の置かれた現状・状況を知り、自分を深く知っていきましょう。
そもそも心の不調(精神疾患)とは何か?
「精神疾患」と聞くと、少し身構えてしまうかもしれません。簡単に言うと、心や脳の働きが一時的にバランスを崩したり、少し異なるタイプだったりすることで、毎日の生活に困りごとが出てくる状態を指します。
これは、感情や考え方、行動に影響を及ぼし、時には人との関係や仕事、勉強に問題が生じることもあります。一時的なものもあれば、長く付き合っていく必要がある場合もありますが、大切なのは、適切なサポートを受けることで症状を和らげ、自分らしい生活を送れるようになる、ということです。
心の不調は決して特別なことではありません。体の病気と同じように、誰にでも起こりうる自然な状態です。生まれつきの脳の特性や遺伝的な要因、ストレス、過去のつらい経験、日々の生活環境など、さまざまなことが複雑に絡み合って現れます。
自分自身の心の状態を理解し、その特性を知ることが、あなたの毎日をより穏やかにする大切な一歩になります。
あなたの「困りごと」はどれに当てはまる?精神疾患の種類を紹介
ここでは、代表的な心の病気や発達の特性の種類をご紹介します。あなたの「うまくいかないこと」と照らし合わせながら、読み進めてみてください。
- うつ病
- 統合失調症
- 双極性障害(躁うつ病)
- 不安障害
- パニック障害
- 社交不安障害
- 適応障害
- 強迫性障害
- 睡眠障害
- 発達障害
- 自閉スペクトラム症(ASD)
- 注意欠如・多動症(ADHD)
- 限局性学習症(LD)
- 発達性協調運動症
※発達障害は、生まれつき脳の機能発達の偏りに起因するものですが、その特性ゆえに社会生活でストレスを感じやすく、二次的に心の病気を発症するリスクも高いため、本記事でも一緒に解説しています。
心が疲れて動けなくなる「うつ病」
うつ病は心が深く疲れ果ててしまい、まるで電池が切れたように気力や意欲が失われる心の病気です。一時的な落ち込みとは違い、そのつらい状態が長く続き、日常生活に大きな影響を与える点が特徴です。
うつ病のサインは、気持ちで感じるものと体で感じるものに分けられます。
- ほとんど毎日、一日中気分が沈み込み、憂うつな気持ちが続く。何事にも興味が持てず、喜びを感じられなくなる
- これまで楽しめていた趣味や活動にも関心がなくなり、やる気が出ない
- 集中力が続かず、物事を決められない、まるで頭が働かないと感じる
- 「自分が悪い」「誰かに迷惑をかけている」と自分を責め続ける気持ちがわいてくる
- 将来に希望が持てず、全てをネガティブに捉えてしまうなど、悲観的で絶望的な考えにとらわれる
- 「いなくなってしまいたい」「死んでしまいたい」と死について考えてしまうこともある
- 寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚める、朝早く目覚めてしまうといった不眠が代表的。反対に、眠りすぎるケースもある
- 食事が喉を通らず、体重が減ることがある。反対に、食べすぎてしまうケースもある
- 体が重く、常に疲れを感じ、朝起き上がるのがつらいと感じる
- 頭痛、肩こり、腰痛、胃の不快感など、特に原因が見当たらない体の痛みを感じる
- 性欲がなくなったり、口が渇いたりする
これらのサインが2週間以上続き、毎日の生活に困りごとが出ている場合、うつ病と診断される可能性が高くなります。
うつ病は、以下のように日常生活や社会生活に深刻な影響をもたらすことがあります。
- 朝起き上がれないため、家事ができない
- 食欲がなく、きちんと食事がとれない
- 入浴や着替えなど、身の回りのことがおっくうになる
- 外出が困難になる
- 集中力が続かず、仕事や学業に支障が出る
- 遅刻や欠勤が増える
- 人とのコミュニケーションが難しくなり、人間関係が悪化する
- 仕事でミスが増えたり、効率が著しく低下したりするなど業務遂行能力に影響が出る
- これらの影響が重なり、最終的に休職や退職に至るケースもある
考えがまとまらない「統合失調症」
統合失調症は、脳の働きに偏りが生じることで心や考えがまとまりにくくなる心の病気です。これにより、気持ちや行動、人との関係など様々な面に影響が出てきます。約100人に1人の割合でかかる、決して珍しくない病気です。
統合失調症のサインは、主に3つのタイプに分けられます。
今までになかった「幻覚」「妄想」などが現れる(陽性症状) | |
---|---|
幻覚 | 実際にはないものを知覚する。特に「幻聴」が多く、誰もいないのに悪口やうわさ話、命令する声などが聞こえてくることがある |
妄想 | 明らかに間違った内容を信じ込み、周りの人が何を言っても受け入れられなくなる。「誰かに陥れられている」と感じる被害妄想や、「何でも自分に関係がある」と思い込む関係妄想などがある。 |
思考の混乱 | 考えをまとめるのが難しくなり、話が支離滅裂になったり、脈絡がなくなったりすることがある |
やる気や感情が薄れる(陰性症状) | |
---|---|
やる気の低下 | 何事にもやる気が起きず、無気力になり、身の回りのことに関心が持てなくなる |
感情の薄れ | 感情が表に出にくくなり、表情が乏しくなったり、喜怒哀楽を感じにくくなったりする |
人との交流を避ける | 他者との関わりに興味を失い、人との交流を避けて家に閉じこもりがちになる |
記憶力や集中力に影響が出る(認知機能障害) |
---|
・本が読めない、会話に集中できない、指示通りに物事ができない、といった困りごとが起こる |
・新しい情報を覚えられない、何をしようとしていたか忘れるなど物忘れが増える |
・計画を立てて物事を進める、効率的な手順を考えるといったことが難しくなる |
統合失調症は、そのサインによって日常生活や社会生活に大きな影響をもたらすことがあり、次のような困りごとが生じます。
- 仕事、学業、人との関係、自分の管理といった面で、病気の前よりもはっきりと能力が低下する場合がある
- 疲れやすさや眠れないこと、食生活の乱れ、身だしなみを気にしなくなる、家に閉じこもりがちになるなど、基本的な生活習慣が乱れることがある
- コミュニケーションの問題から人との関係がうまくいかなくなったり、周りの人への不信感から孤立したりすることがある
- 集中力や記憶力の低下、考えの混乱などにより、仕事や学業を続けることが難しい場合がある
- 無理をして続けていると症状が悪化したり、うつ病などの別の心の病気を発症するリスクも高まる
ジェットコースターのような気分の波「双極性障害(躁うつ病)」
双極性障害は、気分が異常に高まる「躁(そう)状態」と、気分が落ち込む「うつ状態」を繰り返す心の病気です。この気分の波はとても大きく、コントロールが難しいのが特徴です。気分が安定している時期もありますが、波が大きいと毎日の生活に大きな影響を与えてしまいます。
双極性障害のサインは、「躁状態」と「うつ状態」で大きく異なります。
- 根拠もなく気分が異常に高揚し、開放的になったり、些細なことでイライラして怒りっぽくなったりする
- じっとしていられなくなり、精力的に動き回ったり、次々に新しい計画を立てたりと、活動性が増す
- 普段よりおしゃべりになり、次から次へと話がとまらなくなったり、話のまとまりがなくなったりする
- ほとんど眠らなくても平気だと感じ、実際に睡眠時間が極端に短くなる
- 根拠のない自信に満ち溢れ、まるで万能感や全能感を感じるような自己評価の肥大が見られる
- 借金をして豪遊したり、向こう見ずな投資をしたりと、衝動的で無謀な行動に出てしまうことがある
うつ状態の症状は、基本的なうつ病の症状と共通しています。
- 気分がひどく落ち込み、何事にも興味や喜びを感じられなくなることがある
- 仕事や趣味、人との交流など、普段楽しんでいたことにも関心が持てなくなり、やる気が起きない
- 頭の回転が鈍くなったように感じ、集中力が続かず、物事を決めることが難しくなる
- 寝つきが悪くなったり、夜中に目覚めたり、朝早く目が覚めてしまうなどの睡眠の困りごとが見られる。反対に、眠りすぎることもある
- 食欲がなくなって体重が減ったり、逆に食べすぎたりと、食欲に変化が見られる
- 体がだるく、常に疲れがとれない感覚が続く
- 自分を責めたり、死について考えてしまったりすることがある
双極性障害の激しい気分の波は、日常生活や社会生活に大きな影響をもたらすことがあります。日常生活や仕事での「うまくいかないこと」は下記の通りです。
- 躁状態での衝動的な言動や、うつ状態での引きこもりなどが原因で、家族、友人、職場の人間関係に深刻な問題が生じる
- 躁状態での浪費や衝動買い、事業への無謀な投資などにより、多額の借金を抱えるなど、経済的に破綻してしまう影響が出ることもある
- 気分が不安定なため、集中力や判断力が低下し、仕事や学業を続けることが非常に難しいと感じることがある。休職や退職、学業の中断に至るケースも少なくない
- 睡眠リズムの乱れ、食生活の偏りなど、自身の健康管理が難しくなる生活上の課題も現れる
- 躁状態での衝動的な行動がトラブルや法的な問題に発展してしまう可能性もある
心配事がつきまとう「不安障害」
不安障害は、特定の状況や対象、あるいは漠然とした不安が過剰に長く続き、毎日の生活に困りごとをもたらす心の病気の総称です。不安は危険から身を守るために必要な感情ですが、不安障害では、その不安が度を超していたり、実際の危険とは釣り合っていなかったりするため、生活に問題が生じてしまいます。
不安障害の中でも特に多く見られる「パニック障害」と「社交不安障害」について見ていきましょう。
パニック障害:「また発作が起きたらどうしよう」という恐怖
パニック障害は、突然、強い不安とともに、心臓がドキドキする、息が苦しい、めまいがするなどの身体のサインが現れる「パニック発作」を繰り返すのが特徴です。発作そのものは短時間で治まることが多いのですが、「また発作が起きたらどうしよう」という予期不安が強く、これが毎日の生活に大きな影響を与えます。
パニック発作は突然、以下の身体のサインがいくつか同時に現れ、強い恐怖や不快感を伴います。
- 動悸や心拍数の増加
- 息苦しさ、息切れ、窒息感
- 胸の痛みや不快感
- めまい、ふらつき、気が遠くなる感じ
- 吐き気や腹部の不快感
- 体の震え、手足のしびれやうずき
- 冷や汗、ほてり、悪寒
- 現実ではないように感じる(現実感の喪失)や、自分が自分ではないように感じる(離人感)
- コントロールを失う、気が狂ってしまうという恐怖
- 死への恐怖
パニック障害のサイン、特にパニック発作と予期不安、広場恐怖は、以下のようにあなたの生活に影響を与えることがあります。
- 広場恐怖により、電車に乗れない、一人で外出できない、特定の場所に行けないなど、行動範囲が著しく狭まることがある
- 仕事や学業で外出が必要な場合、通学・通勤が難しくなったり、会議や人前での発表ができなくなったりして、休職や退職、学業の中断に至るケースもある
- 常に発作への不安を抱えるため、日常生活のあらゆる場面でストレスを感じ、生活の質が著しく低下することがある
- 外出や人との交流を避けるようになることで社会的に孤立しやすくなることもある
社交不安障害(SAD):人目が気になって仕方がない
社交不安障害は、人前で何かをすることや、人との交流の場面で、「他者から注目されて、嫌な評価をされるのではないか」という強い恐怖や不安を感じる心の病気です。この不安のために、そうした状況を避けたり、とてもつらい気持ちを我慢しながら耐えたりしてしまうのが特徴です。
- 人前で話す(プレゼンテーション、会議、スピーチなど)
- 人前で食事をする
- 電話をかけたり、出たりする
- 初めて会う人と話す
- 公衆トイレを使う
- お店の人に話しかける
- 人から注目される状況
- 顔が赤くなる、汗をかく、声が震える
- 動悸、息苦しさ
- 吐き気、お腹が痛くなる
- 体の震え
社交不安障害では、不安な状況を避ける「回避行動」が頻繁に見られます。これは、強い不安を感じる状況を避けるようになることで、結果的に日常生活や社会生活が大きく制限されてしまう状態です。たとえば、人前で話すことへの恐怖から会議を欠席したり、電車に乗るのが不安で外出を控えたりするようになるかもしれません。
こうした回避行動の背景には、「予期不安」があります。これは、実際に不安な状況に直面する前から、「きっとまたあの嫌な気持ちになるだろう」「失敗するかもしれない」といった強い不安を感じることです。この予期不安が、さらに回避行動を強めてしまう悪循環を生み出すことがあります。
そして、これらのサインは、自分への自信がなくなる「自己評価の低下」につながりやすいです。人からどう見られているかを過度に気にしたり、不安な状況を乗り越えられない自分を責めたりすることで、自信を失ってしまうことがあります。
結果的に、以下のように日常生活や社会生活に影響を与えることがあります。
- 発表やグループワーク、面接、会議など、人前で話す機会を避けるため、学業や仕事のパフォーマンスに影響が出たり、将来の選択肢が狭まったりする
- 新しい友人を作れない、恋愛関係に進めない、職場で同僚と円滑なコミュニケーションが取れないなど、人との関係を築いたり保ったりすることに困りごとが生じる
- 不安を感じる状況を避けることで、結果的に社会的な活動から遠ざかり、孤立してしまう
- 常に人からの評価を気にしたり、社交的な状況を避けたりするため、日常生活における楽しみや充実感が失われがち
ストレスが原因で心身に不調「適応障害」
適応障害は、特定のストレスが原因で、心や体に不調が生じ、毎日の生活や仕事に影響が出てしまう心の病気です。ストレスの原因(人間関係、仕事、学校、家庭の問題、病気など)がはっきりしていて、そのストレスがなくなったり、環境に慣れたりすると、症状が良くなることが多いのが特徴です。
発症から3ヶ月以内にサインが現れ、ストレスの原因が解消されれば6ヶ月以内に症状が治まるとされています。適応障害のサインは多岐にわたり、気持ちで感じるもの、体で感じるもの、そして行動の変化として現れることがあります。
- 気分がひどく落ち込んだり、憂うつになったり、涙もろくなる
- 強い不安を感じたり、落ち着かなかったり、イライラする
- 何事にもやる気が起きず、集中できない、興味が持てない
- なかなか寝付けない、夜中に目が覚める、熟睡できない
- 周りのささいな言動にも敏感に反応し、怒りっぽくなる
- 頭痛、お腹の痛み、吐き気
- めまい、動悸、息苦しさ
- 体がだるく、疲れがとれないと感じる
- 食欲がなくなったり、反対に食べすぎたりする
- ストレスの原因となっている状況や場所を避けるようになる
- 外出を避け、家に閉じこもりがちになる
- 普段ならしないような危険な行動や、衝動的な行動に出てしまうこともある
適応障害は、特定のストレスが原因で心身にサインが現れることで、日常生活や社会生活に影響をもたらすことがあります。
- 集中力の低下ややる気の喪失、過敏性などにより、仕事や学業のパフォーマンスが著しく低下する。欠勤や遅刻が増えたり、ひどい場合には休職や退学に至ることもある
- ささいなことでイライラしたり、感情的になったりすることで、家族、友人、職場の同僚との間に亀裂が生じる
- 眠れないことや食欲不振、体がだるいことなどが原因で、身の回りのことや家事がおろそかになりがち。また、外出が億劫になることもある
- ストレスの原因となっている場所や状況を避けるようになるため、行動範囲が狭まり、社会的な活動から遠ざかってしまう
繰り返しの行動がやめられない「強迫性障害」
強迫性障害は、自分でも「おかしい」とわかっていながら、頭から離れない特定の考え(強迫観念)にとらわれたり、その不安を打ち消すために特定の行動を繰り返さずにはいられなくなる(強迫行為)心の病気です。これらの強迫観念や強迫行為は、毎日の生活に大きな困りごとをもたらし、本人に著しい苦痛を与えます。
強迫性障害のサインは、主に「強迫観念」と「強迫行為」という二つの要素から成り立っています。
頭から離れない考え(強迫観念)
自分の意に反して頭に繰り返し浮かんでくる、不快で不適切な考えや衝動、イメージのこと。本人も「おかしい」とわかっていても、それを打ち消すことが難しい。
【主な例】
不潔恐怖・汚染恐怖
「手が汚れている」「病原菌がついている」といった考えが繰り返し浮かび、汚染されているのではないかと感じる
加害恐怖
「誰かを傷つけてしまうのではないか」「何か悪いことをしてしまうのではないか」といった意図しない暴力や事故への恐怖を感じる
確認行為
「鍵を閉め忘れたのではないか」「ガスを消し忘れたのではないか」といった不安がつきまとう
対象へのこだわり
物が左右対称でないと落ち着かない、特定の数字や順番にこだわるといったことがある
不完全恐怖
完璧でないと気が済まず、少しでもズレているとやり直さずにはいられない
やめられない行動(強迫行為)
強迫観念からくる不安や苦痛を打ち消したり、悪いことが起こるのを防ごうとして、繰り返し行われる行動のこと。不合理だとわかっていても、やめられないのが特徴。
【主な例】
- 手を何度も洗う、過剰にシャワーを浴びる、長時間掃除を続ける
- 鍵やガス栓を何度も確認する、電気のスイッチを何度もオンオフする
- 特定の言葉を心の中で繰り返す、物を特定の順番に並べ直す、何度も同じ行動を繰り返す
- 不要な物を大量にため込む
強迫性障害は、強迫観念や強迫行為がひどくなることで、以下のように日常生活や社会生活に深刻な影響をもたらすことがあります。
- 強迫行為に膨大な時間を費やしてしまうため、学業や仕事、家事などに使える時間が極端に少なくなる影響が出る
- 症状のために外出が難しくなったり、人前で強迫行為を行うことをためらったりすることで、社会参加が難しくなる
- 集中力の低下や強迫行為へのとらわれにより、仕事や勉強に集中できず、パフォーマンスが著しく低下する。欠勤が増えたり、休職や退職に至るケースもある
- 強迫行為に家族や周りの人を巻き込んだり、過剰なルールを押し付けたりすることで、人間関係に大きな負担をかけ、問題が生じる
- 過剰な洗浄剤や確認のための交通費などで、経済的な負担が増える
- 繰り返される強迫観念や強迫行為、それに伴う不安や苦痛により、心身ともに極度に疲れ果ててしまい、うつ病などの別の心の病気を併発することもある
「眠れない」「眠りすぎる」が続く「睡眠障害」
睡眠障害は、眠ることに関する様々な問題(眠れない、眠りすぎる、睡眠中に変な行動が起こるなど)が続き、心身の健康や毎日の生活に影響が出てしまう状態の総称です。単に「眠れない日があった」という一時的なことではなく、その問題が続いて日中の活動に困りごとが出る場合に睡眠障害と診断されます。
睡眠障害には多くの種類がありますが、代表的なものを見ていきましょう。
眠れない「不眠症」
最も一般的な睡眠障害で、「寝つきが悪い」「夜中に何度も目が覚める」「朝早く目覚めてしまう」「熟睡できない」といった状態が続き、日中に倦怠感や集中力低下などの不調を伴う。
【症状】
- 床についてから寝つくまでに30分以上かかる
- 睡眠中に何度も目が覚める
- 希望する起床時間より早く目が覚め、その後眠れない
- 睡眠時間は足りているはずなのに、眠りが浅く、熟睡感がない
- 疲労感、倦怠感、集中力・注意力の低下、イライラ、頭痛など
眠りすぎる「過眠症」
夜に十分眠っているはずなのに、日中に強い眠気が襲ってきて、居眠りを繰り返してしまう状態。
【主な種類】
- 突然耐えがたい眠気に襲われ、場所や状況を選ばずに眠ってしまう「睡眠発作」がある。笑ったり怒ったりすると体の力が抜ける「情動脱力発作」を伴うこともある(ナルコレプシー)
- はっきりした原因がないのに、日中に過剰な眠気が続く状態のこと(特発性過眠症)
睡眠中の呼吸の「問題」(睡眠関連呼吸障害群)
眠っている間に呼吸に問題が生じることで、睡眠の質が低下する障害のこと。
【主な種類】
- 閉塞性睡眠時無呼吸(低呼吸)症候群と呼ばれ、眠っている間に空気の通り道が一時的に閉じてしまい、呼吸が止まったり弱くなったりする状態。大きないびきや日中の強い眠気を伴うことが特徴
睡眠障害は、単に眠れないというだけでなく、その問題が続くことで、以下のように日常生活や社会生活に深刻な影響をもたらすことがあります。
- 強い眠気や集中力・注意力の低下、頭の回転が鈍くなることなどにより、仕事や学業の効率が著しく低下する。ミスが増えたり、大切な判断ができなかったりする
- 遅刻や欠勤が増えたり、居眠りをしてしまったりすることで職場での評価が下がったり、学業成績が悪化したりして、休職や退職、退学に至るケースもある
- 日中の強い眠気は、車の運転中の事故や機械操作中のミスなど、重大な事故につながるリスクを高める可能性がある
- 慢性的な睡眠不足は、高血圧、糖尿病、肥満などの生活習慣病のリスクを高めたり、免疫力が下がったりする身体的な影響が出ることもある
- 眠れないことや眠りすぎることが、うつ病や不安障害などの心の病気を引き起こしたり、悪化させたりするだけでなく、イライラしたり、気分が落ち込んだり、物忘れが増えたりと、直接的に精神状態に影響を及ぼすことがある
- イライラしやすくなったり、気分の波が大きくなったりすることで、家族や友人、同僚との人間関係に悪影響を及ぼしてしまう
生まれつきの特性「発達障害」
発達障害は、生まれつきの脳機能の特性や発達の仕方の違いによって、幼い頃から人との関わり方や学び方、行動の仕方に偏りが見られ、毎日の生活や社会生活で困りごとが生じる状態を指します。病気というよりは、その人の「個性」や「タイプ」と捉えることが大切です。適切な理解とサポートがあれば、その特性を活かし、困りごとを減らしていくことができます。
「対人関係やこだわり」特性の「自閉スペクトラム症(ASD)」
自閉スペクトラム症(ASD)は、「人との関係やコミュニケーションの取り方が少し違うこと」と「特定の物事への強いこだわりや、繰り返しの行動」が主な特徴の発達障害です。これらの特性は、幼い頃から現れ、その現れ方や程度には大きな個人差があります。
以前は「自閉症」「アスペルガー症候群」「広汎性発達障害」などと呼ばれていましたが、現在はこれらをまとめて自閉スペクトラム症(ASD)と診断されます。
自閉スペクトラム症(ASD)の主なサインは、以下の2つのタイプに分けられます。
- 相手との会話が一方的になりがちで、相互的なやりとりが難しいと感じる
- 相手の気持ちや表情、ジェスチャーなどを読み取ることが苦手で、共感するのが難しい
- 人との会話で、適切なタイミングで話に入ったり、抜けたりするのが難しい
- 冗談や比喩表現、皮肉などが文字通りに聞こえてしまい、理解しにくいことがある
- 目と目が合うのが苦手だったり、声のトーンや話し方が状況に合わないと感じられたりする
- 同年代の友人関係を築いたり、維持したりするのが難しい
- グループでの活動で、暗黙のルールや協調性が求められる場面でつまずきやすい
- 手や体を揺らすなど、体を繰り返し動かすこと(常同行動)が見られる
- 特定の言葉やフレーズを繰り返したり、物を決まったように並べたり、回したりすることに強いこだわりがある
- 毎日同じ手順で行動しないと落ち着かない、急な予定変更や環境の変化に強い不安や抵抗を示すなど、決まったルーティンや習慣へのこだわりが見られる
- 特定の分野(例:特定の電車、昆虫、数字、歴史など)に非常に強い興味を持ち、それ以外のことにほとんど関心を示さないことがある。その分野に関する知識はとても豊富
- 特定の音や光、匂い、肌触りなどに過敏だったり、反対に鈍感だったりするなど、感覚に偏りが見られることがある。特定の質感や味覚を極端に嫌がったり、特定の感覚刺激を強く求めたりすることもある
これらの特性は、知的な発達の遅れがある場合とない場合があります。
また、ASDの特性は職業生活、対人関係、そして日常生活において、さまざまな困りごとを引き起こすことがあります。
職場では、暗黙のルールや人間関係の事情を理解しにくいことがあります。また、指示の意図がうまく伝わらず、業務遂行に影響が出たり、ルーティンの変更や突発的な事態への対応が難しいと感じたりすることもあるでしょう。さらに、感覚過敏により、職場の特定の音や光、匂いなどが苦痛となり、集中力を保つのが困難になるケースもあります。
人との関係では、誤解が生じやすかったり、相手の気持ちを読み取ることが難しかったりする特性から、友人関係、恋愛関係、家族関係において悩みを抱えやすくなります。これにより、孤立感を抱きやすいと感じることも少なくありません。
日常生活では、計画を立てて行動することや、臨機応変な対応が苦手なため、日々の暮らしの中で不便を感じることがあります。また、職業生活と同様に、感覚過敏によって特定の衣類や食べ物、場所が苦痛となり、生活の質に影響が出る場合もあります。
「集中できない」「じっとしていられない」特性の「注意欠如・多動症(ADHD)」
注意欠如・多動症(ADHD)は、「不注意」「多動性」「衝動性」という3つの主要な特性を持つ発達障害の一つです。これらの特性は、生まれつきの脳機能の偏りに由来し、子どもの頃から現れて、大人になっても困りごとが続くことがあります。ただし、サインの現れ方や程度、目立つ特性は人によって大きく異なります。
注意欠如・多動症(ADHD)のサインは、主に以下の3つのタイプに分けられます。
- ひとつのことに集中し続けるのが苦手で、すぐに気が散ってしまう。特に興味のないことや単調な作業では顕著
- 日常的に物や約束を忘れたり、必要なものを頻繁になくす
- 細かいところに注意が向かず、不注意による間違いや失敗を繰り返す
- 計画的に物事を進める時間管理や、身の回りの整理整頓が苦手な傾向がある
- 直接話しかけられても、他のことに意識が向いていて、聞いていないように見られる
- じっとしているのが苦手で、座っていても手足をそわそわ動かしたり、貧乏ゆすりをしたりする
- 授業中や会議中など、長時間座っていなければならない場面でも、席を離れたり、落ち着いていられなかったりする
- 必要以上におしゃべりになったり、話の途中で割り込んだりすることがある
- 順番を待つことが難しかったり、質問が終わる前に答えを口走ってしまったりする
- 思いついたことを深く考えずに行動に移してしまうことがある。衝動買いやギャンブルにのめり込みやすい傾向が見られる
- すぐにイライラしたり、かんしゃくを起こしたりと、感情のコントロールが難しい
大人になると多動性が落ち着き、不注意や衝動性が目立つようになることがあります。
ADHDの特性は、毎日の生活や社会生活において様々な困りごとを引き起こす原因となりますが、これらの困りごとは決して本人の努力不足によるものではなく、脳機能の特性によるものです。
学業や仕事の場面では、不注意の特性が顕著に現れることがあります。例えば、ケアレスミスが多いと感じたり、仕事や課題の締め切りを守るのが難しかったりするかもしれません。また、計画的に物事を進めることや、身の回りの整理整頓が苦手なために、学業成績が振るわなかったり、業務効率が低下したりすることもあります。
一方、多動性や衝動性の特性は、授業中や会議中にじっとしていられない、人の話を最後まで聞かずに割り込んでしまうといった行動につながり、学習や仕事の妨げになることもあります。さらに、衝動買いやギャンブルへの依存といった衝動性の傾向から、金銭管理が困難になり、金銭トラブルを抱えるリスクを伴うこともあります。
人とのコミュニケーションでは、相手の話を最後まで聞けなかったり、自分の話ばかりしてしまったりすることがあります。また、相手の気持ちを推し量るのが苦手といった特性から、友人や同僚との間で誤解が生じやすく、人間関係のトラブルにつながってしまうケースも少なくありません。こうした周囲との衝突や、期待に応えられないと感じる自己評価の低さから、孤立感を抱きやすくなることもあります。
「読み書き計算」が苦手な特性「限局性学習症(LD)」
限局性学習症(LD)は、知的な発達に全般的な遅れはないのに、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」といった特定の学習能力のどれかに、著しい難しさがある発達障害の一つです。
これは脳機能の偏りによるもので、本人の努力不足や怠慢が原因ではありません。多くは学生時代にその特徴が明らかになりますが、大人になってから気づく人もいます。
限局性学習症の主なサインは、難しさを抱える特定の学習領域によって3つのタイプに分けられます。複数のタイプを併せ持つこともあります。
文字を読むことに難しさを覚えます。例えば、文字の形や並びを認識しにくかったり、読むスピードが極端に遅かったりします。音読が苦手で文章を読んでも内容が頭に入ってきにくいといった生活上の課題が見られることもあります。
文字を書くことが難しいと感じ、文字の形を覚えるのが難しかったり、バランスが悪くマス目からはみ出してしまったりすることがあります。板書を写すのに時間がかかり、書き漏らしが多いなど、学習面で問題が生じることがあります。
算数や計算をすることが難しく、数の概念を理解しにくかったり、簡単な足し算や引き算でミスが多かったりします。九九を覚えるのが苦手だったり、図形や文章題の理解に影響が出ることもあります。
限局性学習症は、学生の時だけの問題と思われがちですが、書類の記入、バスの時刻表を読む、地図を使う、お金の計算をする、レシピを見て料理をするなど、読み書きや計算が求められる場面は多く、大人になっても毎日の生活で困りごとが生じることがあります。
仕事では、読み書きを必要とする事務作業や、数値を扱う業務でミスが多くなることがあります。マニュアルを読み解くのが難しかったり、メモを取るのに時間がかかったりすることで、業務効率に影響が出ることもあります。特定の業務への苦手意識から、選べる仕事の種類が狭まる可能性も考えられ、自己肯定感が下がることも少なくありません。
「不器用」の背景にある特性「発達性協調運動症」
発達性協調運動症(DCD)は、手先の器用さや全身運動といった運動の能力を身につけたり、実際に体を動かしたりすることに著しい難しさがある発達障害の一つです。
知的な発達の遅れや、他の病気によるものではないのに、年齢や経験から期待されるレベルよりも運動が不器用である状態を指します。いわゆる「運動音痴」とは異なり、練習してもなかなか改善が見られず、日常生活に大きな影響が出る点が特徴です。
発達性協調運動症のサインは、年齢や発達段階によって現れ方が異なりますが、主に以下の領域で困りごとが見られます。
- 体のバランスが悪く、つまずきやすい、よく転ぶ、姿勢を保つのが難しい
- 走る、跳ぶ、ボールを投げる・捕るといった動作がぎこちなく、スムーズでない
- 新しい運動(自転車の乗り方、泳ぎ方など)を覚えるのに時間がかかったり、非常に苦手
- 体育の授業や運動会で、他の子どもについていけず、運動に対して苦手意識を持つ
- 文字を書くのが遅い、字の形が崩れる、筆圧の調整が難しい。ハサミや定規を使うのが苦手なこともある
- ボタンを留める、ひもを結ぶ、箸を使う、コップを傾けずに水を飲むといった、毎日の基本的な動作が不器用
- フォークやナイフ、調理器具、楽器などの道具をうまく操作できないといった、道具の操作に難しさを感じる
- 髪を整える、洋服を着る(特にボタンやファスナー)、靴ひもを結ぶなどに時間がかかるなど、身だしなみを整えることが難しい
これらの不器用さは、単に運動経験が少ないためではなく、運動の計画を立てたり、体を動かしたりする脳の機能の特性によるものです。
着替えや食事、身だしなみといった毎日の基本的な動作に、人よりも時間がかかり、もどかしさを感じるかもしれません。ボタンを留める、靴ひもを結ぶ、箸を上手に使うといった、私たちにとっては当たり前のことが、大きな手間となることもあります。
さらに、料理、裁縫、DIYなど、手先を使う作業は特に苦手だと感じるかもしれません。それによって、挑戦したいことがあっても「どうせ自分には無理」と諦めてしまい、日常生活の選択肢が知らず知らずのうちに狭まってしまうこともあります。
また、つまずきやすかったり、転びやすかったりする特性から、思わぬ怪我につながってしまうケースも少なくありません。
周りから「不器用だね」「どんくさい」といった言葉をかけられるたびに、心がチクリと痛むことはありませんか? そうした経験が積み重なることで、自分に自信が持てなくなり、不安や自己肯定感の低下につながってしまうことがあります。本当は頑張っているのに、なかなか成果が出ないからこそ、人知れず悩みを抱え込んでしまう人もいるのです。
仕事の場面では、手先を使った細かい作業や、精密な動きが求められる業務、あるいは体を活発に動かす業務などで、スムーズに作業を進められないと感じることがあります。新しいスキルを身につけるのにも人より時間がかかったり、特定の業務に苦手意識を持ってしまったりすることで、就ける仕事の種類が限られてしまうといった影響が出る可能性もあります。
さいごに
もし、この記事を読んで「もしかして、これって私のことかも?」と感じたなら、それは大切な気づきです。あなたの「うまくいかないこと」は、決して怠けているからでも、努力が足りないからでもありません。それは、あなたの個性や特性が引き起こしている、ごく自然な「困りごと」なのかもしれません。
大切なのは、自分を責めずに、一歩踏み出すことです。精神科や心療内科、発達障害の専門機関では、あなたの困りごとに合わせたサポートやアドバイスを提供しています。適切な診断と支援を受けることで、きっと今よりも毎日を楽に、自分らしく過ごせるようになるはずです。
「自分の特性を理解して、自分らしく働きたい」
「今の仕事が合わないなら、どんな働き方があるんだろう?」
「仕事の悩みを相談できる場所がほしい」
もし、そんな風に思ったら、私たちエンラボカレッジを頼ってみませんか?
エンラボカレッジのプログラムは、あなたの「なぜかうまくいかない」を解消するために、大きく8つの視点から、座学と実践を繰り返しながら深く掘り下げていきます。一人ひとりの「困りごと」は決して一つではありませんから、様々な角度から丁寧に見ていくことで、「なぜ困っているのか?」という根本的な原因を一緒に確認し、理解を深めていきます。
エンラボカレッジのプログラムを通じて、あなたは職場や日常生活の様々な場面で起こるご自身の「困りごと」への具体的な工夫や対処法を見つけ出せるようになります。さらに、周囲に「どんなサポートが必要か」「どうお願いすればいいか」を明確に整理し、より生きやすい環境を自ら築いていく力を育みます。
新たなステップへ進むために、エンラボカレッジを利用してみてはいかがでしょうか。